「アヴェウムの騎士団」を支える最先端の技術
2023年4月20日
Ascendant Studiosの開発者たちが、Unreal Engine 5.1がどのようにしてアヴェウムの世界を構築しているかをご紹介します。
Ascendant Studiosのチームは開発の初期段階から「アヴェウムの騎士団」を次世代機(現在は現行機)において最高レベルの技術を使う、培ってきたノウハウを底上げするようなゲームにしたいと考えていました。Unreal Engine 5.1は最高級のツールと技術をもたらしてくれるエンジンです。このエンジンを使って我々の初のAAAゲームをリリースできることを誇りに思います。プレイヤーの皆さんにも最高級のゲームを実感してもらえれば幸いです。
ゲーム開発の技術的な部分に興味がある方は、このエンジンがグラフィックの忠実度やゲームプレイにどういった影響を及ぼすかは既にご存じかと思います。Epic Gamesのチームが公開しているUE5の技術デモでその技術力の高さは伝わっていると思います。「アヴェウムの騎士団」はその技術をフル活用して、プレイアブルな部分にまで落とし込んだゲームとなっています。ライティング、ビデオエフェクト、物理演算などが調整され、アヴェウムを舞台にした映画のような体験ができるように設計されています。
エヴァーウォーで残された廃墟や、活気あふれる集落など、ファンタジーの世界でありながらも実際に存在しているかのようなリアルさを追求して開発を進めてきました。これを実現するにあたり、UE5が提供する強力なツールを使用しています。
その一つが「Nanite」です。マイクロポリゴン・ジオメトリシステムは、プレイヤーとの距離に応じて、あらゆるオブジェクトのディティールを調整してくれます。つまり、遠くて細部まで分からないようなオブジェクトがあったとしても、Naniteがそのオブジェクトの複雑さを自動的に軽減することで、ゲーム側の無駄なリソースレンダリングを発生させなくするのです。
技術最高責任者 マーク・マルテア:
他のゲームでは、ごつごつとして大きな壁が見えたとしても、それはテクスチャとシェーダーで処理している場合があります。
しかし、我々はその処理を行う必要がありません。実際にそのディティールを持った壁を作っても、プレイヤーとの距離に応じてNaniteが描画するかを判断してくれるのです。
つまり、遠くのオブジェクトのディティールを減らしてリソースを確保しながら、近くにあるオブジェクトをより詳細に描くことができるのです。
マーク:
ゲームによってはシネマティックのシーンを見て『素晴らしい!』と思っても、実際のゲームプレイ映像を見ると違うゲームに見えてしまうことがあります。ビデオゲームにおいて、これはもはや一般的になりつつありました。
しかし、我々のゲームでは、シネマティックとゲームプレイの品質が限りなく近いものとなっています。ゲーム内のシネマティックが終了してカメラがジャックの一人称視点に戻っても、なんの違和感も感じないでしょう。被写界深度、モーションブラーなど、シネマティックのカットシーンのエフェクトを一部変更する程度で、グラフィックの忠実度は同程度となっています。すべてがリアルタイムで描画されるのです。
また、UE5にはLumenと呼ばれる素晴らしいグローバルイルミネーションと反射のシステムが搭載されており、これによりリアルタイムでライティングを移動させたり、変化させたりすることができます。
シニアアートディレクター デイヴ・ボーガン:
光はキャラクターや物体に当たって影を落とすだけでなく、物体の色を保ちながら反射します。それが、動的か静的かに関わらず近くの物体で見ることができるのです
Lumenはこの処理を効率的に行ってくれるので、補助光や光の密度を追加することでより豊かで雰囲気のある環境を作ることができます。
マーク:
オレメンの空島にある図書館が良い例です。
この浮島では太陽がちょうど水平線の上にあります。歩き回っていると、この光があらゆるものに影響を与えているのが分かると思います。穴の開いた石や瓦礫から光が差し込み、立っている場所によっては完全な影になったり、光に包まれたりして、まるで夕暮れ時にローマのコロッセオにいるような感覚になります。エリア全体でこのような光が使われているのです。
デイヴ:
ゲーム内のライティングに違和感があったり、影がなかったり、光の当たり方が悪かったりすると、それが一瞬だったとしてもプレイヤーの没入感を損なってしまいます。
この技術は、その一瞬を作らないために役立っています。
(Lumenのグローバルイルミネーションシステムを使った8kの画像)
さらに、Unreal Engine 5には移動しながら環境のセグメントの読み込みを行う「World Partition」と呼ばれるシステムがあります。これにより、巨大なプレイエリアを確保できるようになりました。
マーク:
本作は1つのステージがとてつもなく大きいんです。
ステージは大きくひらけているものから、小さいものまで様々です。ステージのなかには、距離にすると25km~30kmにも及ぶものまであります。プレイアブルな範囲だけでです! 誤解が無いよう言っておきますが、本作はオープンワールドのゲームではありません。我々もオープンワールドは好きですが、本作で伝えたいストーリーとオープンワールドのシステムが合致しないと判断しました。
デイヴ: World Paritionの役割を説明すると、巨大なステージを小さなセクションに分割し、プレイヤーが移動する度にメモリから出し入れできるようにするものです。 これにより、プレイヤーを取り巻くグラフィックの忠実度を常に最大化することが可能で、従来では不可能だったサイズのステージを、ゲームプレイを妨げるロードを挟むことなく構築することができるようになりました。 そして、皆さんが慣れ親しんだオープンワールドのゲームとは異なり、すべてのステージが描き下ろされたアートで構築されています。これは、LumenとNaniteにより実現できたことです。これはつまり、歩くだけで素晴らしい体験ができるということです!環境から様々な情報を得ることができるので、よりリアルな世界観を楽しむことができるでしょう。
極めつけは、その世界で自由に歩き回れることです。アヴェウムを旅していると、空まで伸びている建造物や像と出会いますが、それらは単に見せるためだけのグラフィックではありません。シギルを使うことで、周囲の環境を変化させ、新しい道を作って探検することができるのです。古代の石で作られた巨大な像も、プレイヤーの操作一つで動き出します。はるか昔に山に巻き付いた茂みも、プレイヤーの意思でほどくことができます。
本作のステージの大きさ、広さ、美しさを見て、相当な処理能力が必要だと思われるでしょう。それは正しい見解です。
マーク:
他のファンタジーゲームでは、技術的な理由で一部ディティールを実装しないケースがあります。
我々は妥協をしません。しかし、それを実現するためには、古いビデオカードや以前のゲーム機に対応しないという苦渋の決断をしなければなりませんでした。ただし、その分ゲームの内容部分も強化されています。
つまり、これはどういうことなのか説明しましょう。現行機種のハードウェアでもプレイ可能なゲームでありつつ、PC愛好家にはUnreal Engine 5.1の美しさを存分に体験できるようなものを作りました。ベンチマークとして、1080p/60fpsを目標とする最小設定と、1440p/60fpsを目標とする推奨設定での動作環境を紹介します。ただし、リリースまでゲームの最適化は継続して行うため、これらの動作環境は変更される場合があります。変更された場合は、新しい動作環境を都度お伝えします。
すべてのゲームのバージョンにおいて、64-bitのプロセッサとOS(Windows 10以上)、DirectX 12.1以上、110GBの空き容量が必要です。また、SSDでのプレイを強くお勧めします。
この技術を「アヴェウムの騎士団」に導入することで、プレイヤーに末永く遊んでもらえるようなゲームとなることを目標としています。
マーク:
PC版では、テクスチャプールとグラフィックの品質がビデオカードによって変化します。
4090を使っているなら、シネマティックを見ているかのようなゲームプレイ体験を味わえます。また、グラフィックカードやゲーム機がアップグレードされ、より多いメモリを搭載するようになった場合、再コンパイルすることで、より簡単にマシンパワーを有効活用することができます。
これは、Unreal Engine 5なくしては成り立ちません。
マーク:
チームから提案されるアイデアの中には、この技術が無ければ実現できなかったことが多々ありました。
『海で120メートルのメカを歩かせるステージを作って、そのメカを飛行船が攻撃し、さらにメカの中や上でプレイヤーを戦闘させる。さらに、ストーリーが進行するとプレイヤーがそのメカから落ちるのはどうだろう?』とうてい実現不可能に思えるでしょう。しかし、ゲームにはこのステージが実際に実装されているのです。プレイヤーの皆さんにも気に入ってもらえると思います。