• 開発者の声:EA SPORTSのソフトウェアエンジニア兼アクセシビリティリーダーのKaren Stevensにインタビュー 「Madden 18」などのゲームのインクルージョンとアクセシビリティについて詳しくご紹介します。

    EA SPORTSのソフトウェアエンジニア兼アクセシビリティリーダーであるKaren Stevensと、盲目のゲーマーであるRoss Minor氏に、聴覚や視覚に障がいのあるプレイヤーのインクルージョンとアクセシビリティについてそれぞれ話を聞いてみました。

    こんにちはKaren、EA Tiburonでのあなたの役割について少し聞かせていただけますか?

    私はEA Sportsのアクセシビリティリーダーを務めており、このポジションに就任するのは私が初めてです。インクルージョンとアクセシビリティをさらに推進することが私の役割です。私が思うにアクセシビリティとは、人と環境との間に生じるミスマッチを補正することです。障がいのある方々も含めて誰もが楽しめるゲームを作るのが開発者の責務です。

    ビデオゲームの体験においてアクセシビリティはなぜ重要なんですか?

    ビデオゲームは広く普及したエンターテインメント形態の1つであり、家族や友人とプレイするのが一般的です。ゲーム内のアクセシビリティをサポートすることで、総合的にゲームがより一層良質になるだけではなく、分け隔てない価値ある体験を提供することで人生をより豊かにします。

    Ross Minor氏とはどのように知り合ったんですか?

    「Madden NFL」ゲームのアクセシビリティについて、Rossさんから寄せられた電子メールがきっかけでした。彼は視力を失う前から同シリーズのファンで、もう一度このゲームを体験したいと強く望んでいました。

    彼の住まいがEA Tiburonからわりと近いことがわかり、当社のキャンパスに招待し、アクセシビリティ認知向上イベントに参加してもらうことを提案しました。EA Tiburonは最近、ゲームのアクセシビリティに焦点を当てた従業員リソースグループを立ち上げたところでしたから、視覚障がいのあるゲーマーを代表する講演者として彼を招待できるのはすばらしいことでした。

    開発チームはRossさんの質疑応答セッションから、どのようなことを学びましたか?

    メニューのラッピング機能など、ある特定の要素が視覚障がいのあるゲーマーには分かりづらいということを知ることができました。また、Rossさんは、ゲーム内の現在の位置を判断する手掛かりに3Dサウンドの音を使うというアイデアや、コントローラの振動音をどのように使えばイベントのヒントになるか、さらにはどのように音をデザインすれば格闘ゲームがプレイ可能になるかについても話してくれました。

    視覚障がいのあるゲーマーの方々をより有効的にサポートする方法についての詳細は、一般公開されている私のGDCプレゼンテーション「Triple A Gaming While Blind(見えない人にも最高のゲーム)」をご覧ください。

    「Mortal Kombat」でRossさんにコテンパンにやられたチームメンバーたちは、ゲーム対決を通して、視覚障がいのあるゲーマーのゲームプレイ能力について抱いていた、なかなか消えない疑念を払拭するのに非常に効果的でした。

    Rossさんはスタジオ訪問中に、他にはどのような体験をされたのでしょうか?

    触知を使いながらスタジオ内を紹介するスタジオツアーを行いました。当社には芝生の壁、ヘルメットの壁、グローブの壁、バスケットボールの壁、ユニフォーム着用のマネキンなど、Rossさんの探求心や興味をそそるものが多数あります。また彼には、当社の録音ブースと、オーディオチームのオフィスにある機材で、様々な音響を聴いてもらいました。スタジオの詳しい内観については、こちらをご覧ください。

    「Madden NFL 18」のパッチリリース前の新たな設定「ビジョンアシスト」をRossさんにプレイしてもらう機会も設けました。彼は視力を失って以来、初めてタッチダウンを決めることができました。

    視覚や聴覚に障がいのあるプレイヤーをサポートするアクセシビリティ施策は以前から行っていましたか?

    はい。視覚的な依存度が少ないオプションを備えた「Madden NFL 17」がすでにリリースされており、ファンの皆さんから好意的なフィードバックを多数いただいていました。また、視界の中央部が欠落してしまう加齢黄斑変性症など、視覚疾患を抱える社内開発者の何人かにこのオプションをテストしてもらいました。

    さらに「Madden NFL 17」には、色覚障がいをサポートする機能も搭載されています。これらの機能は、代表的な色覚障がいの各タイプをそれぞれ抱えるスタジオの社員たちによって、徹底的に社内テストが実施されたものです。

    「Madden 17」のアクセシビリティ機能の詳細については、EAのニュースブログ投稿をご覧ください。

    RossさんをEA Tiburonに招待できたことは、チームにとってどんな意味がありましたか?

    ゲーム開発者として、様々なゲーマーがいて、ゲーマーごとにゲーム状況を判断する感覚が異なることをより深く理解できたのはすばらしいことです。開発の視点から見ると、慣れ親しんだ環境から飛び出して、障がいのあるプレイヤーもサポートすることに挑戦するのは大切なことです。

    今回のようなプログラムは、「ゲームで世界にインスピレーションを与える」というEAのビジョンをどのように具現化していますか?

    ゲームは誰もがプレイできるものであるべき、というのが私の考えです。私が目指しているのは、あらゆる能力のゲーマーが当社ゲームの対象者であり、開発プロセス全体にわたって考慮に入れるべきだという認識を高めることです。

    開発チームはRoss氏の訪問からどのような影響を受けましたか?

    非常に前向きで、今でも開発チームで彼の訪問のことが話題に上ります。折に触れ、彼への質疑応答から学んだことを従業員たちが話すように促しています。

    Rossさんにお聞きしたいのですが、EA Tiburonを訪問した際、あなたにとって最も楽しい瞬間はどんなときでしたか?

    EA Tiburonの会議室のテーブル中央に多数のボールを入れておくスペースがあり、それが楽しかったです。また、録音ブースがどれほど静かなのかを知ることができ、それも楽しかったです。何よりもうれしかったのは、EA Tiburonスタッフの方々が好奇心に満ち溢れ、アクセシビリティに対する私の考えに非常にオープンだったことです。それはイノベーションを実現する大きな兆しです。

    メジャーな開発スタジオ内を歩いた時、どんな感想を抱きましたか?

    映画『チャーリーとチョコレート工場』の中に入り込んだような感じでした!フロアごとにテーマがあることも好きでしたし、高度なテクノロジーが満載で、スタジオにまとまりがあることも気に入りました。

    講演時と質疑応答セッションでどのような内容を話しましたか?

    視力を失ったプレイヤーや他の障がいがあるプレイヤーのための様々なアクセシビリティ方法について意見を交換し、ビデオゲームにもっと多様性を取り入れるうえで私が言及したことが非常に重要であることを話しました。

    開発チームからの質問で意外だったものはありますか?

    今すぐ思い付くものはないのですが、ほとんどの観客が意見交換に参加してくださったことが特にうれしかったです。彼らが非常に真剣に取り組もうとしていることを見て取れました。

    あなたの質疑応答セッションから開発チームはどのような影響を受けたと思いますか?

    多くの人にとって、目を見張る体験だった感じています。ビデオゲーム内のアクセシビリティ改善に対する意識を高めることは容易ではありません。しかし私は今、その種を植えたんです。アクセシビリティが備わったゲームプレイの実現に向けて、協力していければと願っています。

    「Madden 18」のアクセシビリティ機能についてどう思いますか?

    個人的には、素晴らしいスタートを切っていると思います。ただ、インクルージョンの発想をもって様々な人をビデオゲームの制作に巻き込んでいくには、ある程度時間がかかることでしょう。

    すでに「Madden」にいくつかのアクセシビリティ機能が搭載されていること。それは素晴らしい第一歩であり、同ゲームシリーズに対する大きな展望を示しています。振動を頼りにキックアクションやボールのパスを行うのは非常に有効で、視覚障がい者がゲームをプレイする新たな方法を切り拓きます。

    将来的にアクセシビリティを展開していくには、ゲームプレイヤー皆さんのご協力が必要です。今後の潜在的な改善点を把握するためにも、アクセシビリティ関連のバグとフィードバックに記入いただければと思います。

    EAのアクセシビリティへの取り組みについての詳細は、ea.com/ableのアクセシビリティポータルか、Twitterの@ea_accessibleでご確認いただけます。

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